皆さん、こんにちは。
例年に比べ暖冬とはいえ、さすがに寒さが厳しくなってきましたね。
年末を迎え、体調を崩しやすい時季です。お風邪など召されませぬように。
さて、職場においては、体調を崩しているっぽい従業員に対し「なんだ、顔色悪いぞ。体調悪そうだな。体調管理の仕事のうちだぞ、納期も近いしがんばれよ」なんていう叱咤激励をとばす上司も、存在します。
この「体調管理の仕事のうち」という言葉、誰の仕事といっているのでしょうか。
もちろん、従業員も職務専念義務を履行できるように健康管理に留意しなければなりません。
しかし、過重な業務による長時間労働や深夜労働、それに伴う睡眠不足で体調を崩しているというような場合、そして、その事実を上司が把握している場合は、その従業員の体調管理の責任は上司にもあります。
「体調管理は(上司の)仕事のうち」という特大ブーメランが上司に戻ってくるのです。
上司含む組織は、その部下の業務を軽減したり、納期を遅らせるなど、何らかの措置を講じる義務が生じます。
これを「安全配慮義務」といい、その根拠は、労働契約法第5条にあります。
(労働者の安全への配慮)
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
民事裁判において、会社側が安全配慮義務を履行していないと認められた場合は、債務不履行や不法行為を理由とする損害賠償責任を負うことになります。
この安全配慮義務が明文化されたのは労働契約法が施行されたときです。
労働契約法の施行時に、安全配慮義務に関する判例法理に沿って規定されました。
通常の場合、労働者は、使用者の指定した場所に配置され、使用者の供給する設備、器具等を用いて労働に従事するものであることから、判例において、労働契約の内容として具体的に定めずとも、労働契約に伴い信義則上当然に、使用者は、労働者を危険から保護するよう配慮すべき安全配慮義務を負っているものとされていますが、これは、民法等の規定からは明らかになっていないところです。
このため、労働契約法法第5条において、使用者は当然に安全配慮義務を負うことを規定したものです。
この安全配慮義務が明文化に至るきっかけになったのが平成初頭の電通事件です(近年の「第2の電通事件」とは別です。)
「電通事件」は、高額な損害賠償額とあわせて、過重労働についての企業側の民事上の損害賠償責任を認めた初の判断として注目され、過労に対する企業責任のあり方についてのターニングポイントになりました。
その詳細はこちらから。
