社会保険労務士試験受験生の皆さん、こんにちは。
今回は、平成29年の択一式試験問題の難度や合格基準点について考えてみたいと思います。難度を考える上でまず平成28年の本試験データを振り返ってみます。
【平成28年の択一式の本試験データ】
平成28年の択一式の総合基準点は42点以上でした。科目別基準点は各科目4点以上、ただし、「常識、厚年、国年」は3点以上に補正されています。
そして本試験の得点データや合格基準点の決定方式は公表されています。平均点、得点分布は表にあるとおりです。左の表が平成27年、右の表が平成28年のデータです。
【合格基準点の決め方】
択一式の総得点の決定方式は平均点と連動します。平成28年は平均点が前年から3点下がった(31点→28点)ため、総合基準点も3点下がりました(45点→42点)。
②前年度の平均点との差が+0.5点以上→前年度より上げる
・+0.5点~1.4点→1点上げ
・+1.5点~2.4点→2点上げ
・+2.5点~3.4点→3点上げ
※以下同じ法則で上げていく
③前年度の平均点との差が-0.5点以上→前年度より下げる
・-0.5点~1.4点→1点下げ
・-1.5点~2.4点→2点下げ
・-2.5点~3.4点→3点下げ
※以下同じ法則で下げていく
一方で、科目別基準点は得点分布と連動します。いわゆる補正が行われる条件が「3050」ルールです。「2点以下割合30%以上及び3点以下割合50%以上」に該当すると、基準点補正が行われます。
かつ
②2点以下割合が30%以上
平成27年は条件に該当する科目がなく補正は発動しませんでしたが、平成28年は前述の3科目が該当し、補正が発動しています。表をみると分かる通り、常識以降、急激に3点以下の割合が増えていますね。この後半科目からヘタる理由は後述します。
【組み合わせ問題、個数問題の出題数は?】
近年増えてきているのが組み合わせ問題と個数問題です。これらは、問題形式をいじることにより正答率を調整するための問題です。
五肢択一の問題は、最低一つの肢の正誤判断で解答を特定できます、一方、組み合わせ問題は最低でも2つの肢、個数問題は5つの肢の正誤判断が必要となるため、正解率は低めになり、また、解答の特定にも時間がかかります。出題問題数の推移をみると、表に通りになっています。
組み合わせ | 個数 | |
H28 | 11 | 7 |
H27 | 11 | 3 |
H26 | 9 | 4 |
H25 | 13 | 0 |
組み合わせ問題は毎年13問から9問の出題となっています。今年も10問前後は出題されるでしょう。
個数問題は平成25年以前はまったくなかったのが、平成26年以降解禁された様子で、平成28年においては過去最高の7問出題となっています。これが平成28年の平均点を引き下げた要因の一つでしょう。
試験においては、しっかり勉強した層の正解率が高く、そうではない層の正解率が低い、この差が大きいほどいわゆる良問とされます。その意味で個数問題は、両方の層で正解率が同じくらいになる、あるいは、勉強した層の方が正解率が低くなるという意味で悪問といえます。例えば「誤っているものはいくつあるか→(アとイの)2つ」という問題でいうと、「(アの)一つ」や「(アイウの)3つ」という正解にニアミスの解答をしても×です。一方で「(エとオの)2つ」と見当違いの解答をすると○になるという、正解から遠い解答を選んだ方が得点できてしまう可能性がある問題です。
この点から個数問題は廃止にして、現在2肢の組み合わせ問題を3肢の組み合わせ問題してもらいたいと思っているのですが、運営サイドの判断はどうなるでしょうか。
【平成28年に平均点が下がった理由】
前述の通り、平成28年は平均点が下がりました。本試験直後は、難度は平年並という講評が多かったのですが、結果的にマイナス3点です。
これは次の点が要因と思われます。
①個数問題、事例問題が増加→時間と思考力のロス
②解答時間の不足→後半の年金科目での取りこぼし
③試験順番の変更Ⅰ→午前の選択式で気力・体力を奪われて午後の択一へ
④試験順番の変更Ⅱ→無勉層が午前選択で飽きて、午後択一は無気力解答
試験時間の変更はかなり影響があったようです。以下が昨年、そして今年の試験時間です。
10:00の集合から5時間くらいたってバテた状態で後半科目に入っていきますし、またメンタル的にも午前の選択の出来が不安で午後もどうしても気がかりになってしまったり、逆に、選択の出来がよくて高揚状態になり択一で冷静に判断できなかったということもありそうです。
また、無勉層は、午前の選択式で飽きと諦めで、午後はほとんど無気力でマークしていた可能性もあり、平均点の押し下げ要因になったと思われます。
平成29年も同様の事象は生じそうです。
【平成29年の難度、合格基準点はどうなる?】
運営サイドとしてはこれ以上平均点を下げたくないという思惑があるはずです。もしこれ以上平均点が下がると総合基準点も下がって42点を下回ってしまいます。60%を切るということです。原則の合格基準点が49点(7割)であるのに、合格基準点が6割を切るのは非常に格好が悪いですw
試験委員の先生方にちょっと易しめにしてくれという要請はいっていると妄想しています。
もし問題文が易しめにするというのは、基本的な問題や過去問リピート問題を増やすこと、事例問題や個数問題を減らすこと、などです。易しくなると平均点もあがり、合格基準点も上昇します。
以上のことから、予想としては、次のとおりです。
・昨年に比べ個数問題や事例問題が減り、全体的にやや易しめになる
・総合基準点は45点前後
もちろん、蓋を開けてみなければ分かりませんので、参考程度にしておいて下さいね。
【絶対確実な合格基準点は?】
ただこれだけは言えるということがあります。難化傾向といわれる今の社労士試験においても、択一式で合格ラインにのるために、高度な現場思考力や細かすぎる知識は必要ありません。基本書に掲載されている内容をある程度理解し、過去問を中心とした演習で引っ掛け論点をマスターし、暗記すべき事項を地道に暗記することで十分ライン上にのります。
社労士試験の合格を難しくしているのは、あくまで選択式です。
したがって、択一式対策の勉強ではスクールの模試の細かすぎる論点や意地悪問題に惑わされずに、基本に忠実に勉強を進めていきましょう。
そして安心して合格発表を待つことができる絶対確実な得点である49点、各科目4点以上取ることを目標にしましょう。
しっかり準備をした受験生の方が択一式で49点以上とることは時間配分をしっかり行えば十分可能です。その時間配分について次回の記事でまとめます。

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