【最高裁判例】国・行橋労基署長(テイクロ九州)事件②【社労士】

最高裁判例

社会保険労務士試験の受験生の皆さん、こんにちは。

2017年試験対策に向けての最新判例をご紹介します。

前回「国・行橋労基署長(テイクロ九州)事件」(平成28年7月8日)について取り上げました。歓送迎会に参加した後に職場に戻る途中での事故が労災認定されたということで、新聞報道などでも大きく取り上げられた事件です。

この裁判での最大の争点は、「歓送迎会に参加した後に職場に戻る途中」の行程において「事業主の支配下」にあったかどうかという点です。
「事業主の支配下」にあったかどうかは、「歓送迎会の参加は強制か任意か?」「研修生を送る行為は指揮命令に基づくものか?」という点が判断の分かれ目になりました。

歓送迎会の参加は強制か任意か?

●労基署の主張
・歓送迎会は、研修生との親睦を深めることを目的
・歓送迎会は事業場外で開催され、アルコール飲料も供されたものである
・労働者がこれに中途から参加している
・会社の従業員有志によって開催された私的な会合である

●裁判所の判断
・労働者が業務を一時中断して上記歓送迎会に途中から参加した後に事業場に戻ることになったのは、上司から歓送迎会への参加を打診された際に、業務を理由に断ったにもかかわらず、歓送迎会に参加してほしい旨の強い意向を示されたため
・歓送迎会は、事業主が事業との関連で子会社から研修生を定期的に受け入れるに当たり、上司の発案により、研修生と従業員との親睦を図る目的で開催されてきたものであって、従業員及び研修生の全員が参加し,その費用が事業主の経費から支払われるなどしていた。

解説
100%強制参加ではなかったものの、参加への圧力は強かった状態というという判断です。

研修生を送る行為は指揮命令に基づくものか?

労基署の主張
・研修生らを本件アパートまで送ることが上司の明示的な指示を受けてされたものとはうかがわれない
・歓送迎会に付随する送迎のために労働者が任意に行った運転行為が事業主である本件会社の支配下にある状態でされたものとは認められない
・本件事故による労働者の死亡は、業務上の事由によるものとはいえない

●裁判所の判断
・労働者は、事業主の所有する自動車を運転して研修生をその住居まで送っていた
・研修生を送ることは、歓送迎会の開催に当たり、上司により行われることが予定されていたものである
・その経路は、事業場に戻る経路から大きく逸脱するものではなかった

解説
研修生を送る行為も明示的な指揮命令に基づくものではなかったものの、「事業主の所有する自動車」で「上司に代わって」行ったものであるという点に着目し、指揮命令下に置かれていたという判断です。

裁判所の判決

●業務遂行性の判断
労働者は、本件事故の際、なお会社の支配下にあったというべきである。

解説
判決では諸般の事情を考慮し、労働者が業務を一時中断して上記歓送迎会に途中から参加した後に事業場に戻る行程を「会社の支配下にあった」として「業務遂行性」の存在を認めています。

●業務起因性(相当因果関係)の判断
また、本件事故による労働者の死亡と上記の運転行為との間に相当因果関係の存在を肯定することができることも明らかである。

解説
 業務遂行性の存在の前提の上、労働者の死亡と運転行為との間の相当因果関係の存在も肯定し、「業務起因性」を認めています。
相当因果関係というのは「その業務に潜んでいる危険が具体化したもの」という意味です。外回りの営業中に交通事故が発生した場合は「運転中に交通事故に遭う危険はつきもの」ということで相当因果関係が認められて一般的に労災認定されますが、本件交通事故も同様という判断です。

以上、「国・行橋労基署長(テイクロ九州)事件」(平成28年7月8日)についてでした。

 

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