【最高裁判例】国・行橋労基署長(テイクロ九州)事件①【社労士】

社会保険労務士試験の受験生の皆さん、こんにちは。

2017年試験対策に向けての最新判例をご紹介します。

今回は「国・行橋労基署長(テイクロ九州)事件」(平成28年7月8日)についてです。
歓送迎会に参加した後に職場に戻る途中での事故が労災認定されたということで、新聞報道などでも大きく取り上げられた事件です。

今年は「奇数年の小畑労災」の年ですが、電通事件と並んで出題候補の筆頭といえるでしょう。

事件の概要

労働者が、業務を一時中断して事業場外で行われた研修生の歓送迎会に途中から参加した後、当該業務を再開するため自動車を運転して事業場に戻る際に、研修生をその住居まで送る途上で発生した交通事故により死亡しました。

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最初は断ったが上司から「ぜひ参加してくれないか」と強いお誘いがあり仕事を中断して参加

その遺族が労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付及び葬祭料の支給を請求したところ、行橋労働基準監督署から、労働者の死亡は業務上の事由によるものに当たらないとして、これらを支給しない旨の決定(不支給決定)を受けたため、裁判所にその取消しを求めました。

最高裁まで争われた結果、業務上の事由による災害に当たると判断され、不支給決定の処分が取り消された事例です。

このことから国・行橋労基署長事件と呼称されています。

業務遂行性と業務起因性

業務上とは、業務原因となったということであり、業務と傷病等の間に一定の因果関係があることをいいます。この因果関係を業務起因性といいます。

業務上と認められるためには業務起因性が認められなければならず、その前提条件として業務遂行性が認められなければなりません。

すなわち、
●事故があった際に業務中であること=業務遂行性がある
●業務がその事故が原因で生じたこと=業務起因性がある
業務災害として認められる、ということです。

国・行橋労基署長事件で主要な争点になったのは、「歓送迎会に参加した後に事業場に戻る途中の運転行為」に業務遂行性が認められるかどうかの判断です。この判断のキモになるのが、その行為中に「事業主の支配下」にあったかどうかです。

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上司に代わって研修生を自動車で送り届ける途中で事故が発生

事業主の支配下とは

事業主の支配下」とは、「労働契約に基づき事業主の支配下にある状態」とされていますが、ざっくりいえば「その会社の従業員でなければ置かれていなかった状態」をいいます。

例えば、職場の休憩室で休憩中業務遂行性はあります。なぜならば、その会社の従業員でなければその職場の休憩室で休憩することはできないからです。

ではこの業務遂行性が認められる場面を整理します。

業務遂行性が認められる3つの類型

業務遂行性は次のような3つの類型に分けることができますがいずれも事業主の支配下にあることが前提になっています。

●事業主の支配・管理下(施設内)で業務に従事している場合

職場内で仕事中工場内で作業中などの場合や、仕事中に水を飲むとかお手洗いにいくといった生理的行為も該当します。
・この場面では、殆どの場合、業務起因性が認められて、業務上の災害とされます。ただし、プライベートのいざこざで同僚に殴られたとか、自然災害に巻き込まれた場合は、業務起因性は認められずに、業務上の災害とされません。

●事業主の支配・管理下(施設内)にあるが、業務に従事していない場合

休憩時間に事業場構内で休んでいる場合、事業附属寄宿舎を利用している場合や事業主が通勤専用に提供した交通機関を利用した場合などです。一方、休日に構内で遊んでいるよう場合は、事業主の支配・管理下にあると言えません
・この場面では、殆どの場合、業務起因性は認められずに、業務上の災害とされません。ただし、用便中の事故事業場の不備欠陥によって災害を被った場合は、業務起因性が認められて、業務上の災害とされます。

事業主の支配下にはあるが、管理下を離れて業務に従事している場合

出張や社用での外出、運送、配達、営業などのため事業場の外で仕事をする場合が該当します。出張の場合は、私用で寄り道したような場合を除き、用務先へ向かって住居又は事業場を出たときから帰り着くまでの全行程に渡って業務遂行性が認められます。
・この場面では、殆どの場合、業務起因性が認められて、業務上の災害とされます。例えば、出張先で宿泊しているホテルに火災にあい負傷した場合も業務上の災害とされます。

本事件は、施設内での事故ではなかったため、3つ目の「事業主の支配下にはあるが、管理下を離れて業務に従事している場合」に該当するかどうか、突き詰めると「事業主の支配下」にあったかが最大の争点になりました。

次回は、「事業主の支配下」にあったかどうかの双方の主張について整理します。次の記事をどうぞ。

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