【最高裁判例】電通事件②過労死(過労自殺)と安全配慮義務【社労士】

社会保険労務士試験の受験生の皆さん、こんにちは。

今回は【最高裁判例】電通事件の概要②をご紹介します。

事件の概要

Aさんは、24歳で電通に入社し、ラジオ局に配属され企画立案などの業務に携わっていました。長時間残業・深夜勤務・休日出勤などの過重労働が続いた結果、うつ病になり、入社から1年5か月後、自宅で自殺しました。

最高裁まで争った結果、下記の内容で合意に至りました。判決文全文はコチラから。

●会社は遺族(両親)に謝罪するとともに、社内に再発防止策を徹底する
●会社は一審判決が命じた賠償額(1億2600万円)に遅延損害金を加算した合計1億6800万円を遺族に支払う。

事件の争点

この事件で争点になったのは次の点です。

●企業に過重労働の認識があったか
過重労働うつ病自殺の関係
●企業は安全配慮義務を尽くしたか
本人の性格家族の対応を理由とした賠償額の減額

それぞれの争点についてまとめていきます。

企業に過重労働の認識があったか

●企業側主張
「そもそも過重労働を認識していない」
「退館記録は深夜2時だが、Aの勤務時間申告では退勤時間は夜8時」
「その間はAは仕事をせずに別のことをしていたということ」
「つまり、過重労働は存在せず、その認識もしていない
●判決
「Aは40社のスポンサー企業を担当し、その業務量は相当多かった」
「かつ、当企業では他の社員も当然のようにサービス残業をしていた」
「Aは日中はスポンサー企業やイベント運営に追われ、夜になってから企画の仕事を行っていた」
「8時以降サービス残業していたと考えるのが妥当。直属の上司も残業時間の過少申告の実態を把握していた。」
「すなわち、過重労働は存在し、企業も認識していた

過重労働とうつ病と自殺の関係

●企業側主張
「自殺するかどうかは本人の選択。仕事は関係ない」
●判決
「Aには精神疾患の既往はなく、家族歴にも精神疾患はない」
「Aは常軌を逸した長時間労働とそれによる睡眠不足の結果、心身ともに疲労困憊し、それが誘因となってうつ病に罹患した」
「うつ病が進行する中、今後も長時間深夜勤務の過酷な日々が続くことに虚しくなり、その結果として自殺に至った」
「すなわち、業務の遂行とそのうつ病り患による自殺との間には相当因果関係がある」

企業は安全配慮義務の履行を尽くしたか

●企業側主張
「自殺はそもそも防げない。安全配慮義務が成立する余地はない
「仮に成立したとしても安全配慮義務を尽くしている」
「健康管理センターの設置、深夜宿泊施設の確保、タクシー乗車券の無制限の配付、時間外労働の多い社員に対するミニドックでの受診の義務づけている」
●判決
「会社が準備した健康管理の措置は実質的に機能していないことは明らか」
「Aの上司は、Aの恒常的な長時間深夜勤務と健康状態の悪化を認識していながら、業務量の調整などの負担軽減の措置を採らなかった
「すなわち、企業は安全配慮義務を尽くしていない
「よって企業はAの死亡による損害を賠償する責任を負う」

本人の性格や家族の対応を理由とした賠償額の減額

二審(東京高裁)では、Aの性格や両親の対応を理由に賠償額が減額するとの判決が出ましたが、最高裁判決で違法との判断が示されました。

●東京高裁判決
「Aの完璧主義でまじめな性格がうつ病を進行させた面もある」
「また家族も同居してAの変調に気付いていたのに勤務状況を改善する措置を講じなかった」
「本人の性格と家族の対応にも責任の一端があるので、その分損害賠償額は3割減が妥当
●判決
「完璧主義でまじめな性格、は色々なタイプ(個性の多様さ)がいる企業の中で特段変わった性格ではない」
「また同居の家族といえども一社会人であるAの勤務状況を改善させる措置を講ずることは無理」
「すなわち、本人の性格と家族の対応を理由に減額するのは違法

以上、電通事件のまとめです。

社労士試験の対策

社労士試験対策上、電通事件(安全配慮義務)の内容は、労働基準法、労働安全衛生法、労働契約法、労働者災害補償保険法と絡んできます。
特に、平成29年は「奇数年の小畑労災」がくる可能性があるため、電通事件の備えが必要でしょう。
国・行橋労基署長(テイクロ九州)事件と並んで出題候補の筆頭です。

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